遺言書の作成件数は近年、増加する傾向にあります。
日本公証人連合会の発表によれば、平成20年では7万6千件あまりでしたが、平成29年では約11万件と、この10年間で作成件数が約1.5倍になっています。

これはつまり、親族が亡くなったとき、遺言書が残されている可能性が高まっているということです。
そこで今回は、遺言書を見つけたときの正しい開封手順と、不用意に開けてしまった場合の対応についてご紹介します。

遺言書は3種類
遺言書は「遺言公正証書」「遺言自筆証書」「遺言秘密証書」の3種類があります。
遺言公正証書とは、公証役場で公証人の立ち会いのもと作成される遺言書のことで、作成されると原本が公証役場で保管されます。したがって、遺品の整理中に遺言書が見つかったという場合は、ほぼ遺言自筆証書といえるでしょう。
「遺言秘密証書」もありますが、こちらは自分で作成した遺言書を公証役場で、遺言書の存在自体を証明してもらう手続きをとったものです。
公証役場にも内容が分からないので、利用する人が少ないといえます。

遺言書は開封せずに「検認」してもらう
遺言書が見つかった場合、すぐに開封しないことが大切です。「検認」の申し込み（申し立て）手続きを取る必要があります。
申し込み先は故人の最後に住民登録をしていたところにある家庭裁判所です。

なお、すべての遺言書が封をされているとも限りませんし、封筒に入れられているだけの場合や、もしかしたらメモ書きのようなものの場合もあるかもしれません。
そのような場合でも、検認を受けましょう。公証役場で作成された遺言書以外は、検認が必要です。

検認の意味は、遺言書の内容や状態を記録し、その後の勝手な変更（改ざん）を防ぐことにあります。
遺言書を故人の意思を表す証拠として保持する意味合いもあります。しかし、検認とはあくまでも、その後の偽造を防ぐのに必要な手続きです。
家庭裁判所で検認を受けたから、遺言書として有効になるのではないという点に注意しましょう。

検認の申し込みに必要な書類はこちらで確認できます。
申し込みから実際の検認までに1カ月程度かかりますので、遺言書は金庫などで大切に保管しておくようにしましょう。

民法1004条で遺言書の検認が定められているため、遺言書を勝手に開封してしまった場合には、5万円以下の罰金を科せられる可能性があります。
なお、開封してしまっても検認の手続きは必ず取ってください。
また、もちろん遺言書を偽造したり、隠したり、捨てたりしてもいけません。



そこには遺言を尊重せずに自分にとって有利に物事を運ぼうとする目的があることになりますので、そのような場合には、相続人の権利を失うことになります。

遺言書の作成件数が増えていることからも、遺言書に出会うのは他人事とも言い切れません。
遺言書を見つけたら勝手に開封せず、速やかに検認の手続きを取ることが大切です。
遺言書は、故人が残した最後のメッセージともいえます。
遺族の間で財産に関するトラブルが起こらないようにしたいという配慮の可能性があります。
故人の遺志を尊重するためにも、正しい手続きで遺言書を開封し、遺族に伝えることが大切です。